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生体膜の潜在機能の根本的な理解と、それに基づく新しい科学技術の創成に取り組んでおります。得られた成果は、原著論文、学会発表、総説、MSBシンポジウムで、積極的に公開していきます。

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アポロが月に行けたのは,月に行くという目標があったからであり,飛行機の関連技術の改善によるものではない.飛躍的に飛び立つ事のできる新産業を創成するためには,直近の目標を設定した技術開発ではなく,大きな目標(夢)に基づく技術戦略の根本的見直しが必要である.

本プロジェクトは「基礎工学」的(図1)な革新融合研究である.

生物機能の活用とは今あるものを切り取る事ではない.昨今の生物機能活用(バイオテクノロジー)研究では,酵素・特定遺伝子を過剰に発現する生産するなどを通じて,人間の目的(欲求)を満たすために材料・プロセス設計に終始している感は否めない.これでは,今までどおり,自然環境に調和できない人工物を作り続けられ,早晩,環境が破壊される事は自明である.「生命-生体系が進化の過程で獲得してきた機能」に学んで新たな方法論を確立する事が重要である.本研究では,リポソームという自己組織的な分子集合体が環境と調和して新たな価値(分子認識点・触媒活性点を共役した構造・機能)を構築する事を基本原理とした革新的なバイオテクノロジーの方法論を確立することを目的とする.当プロジェクトで目的とする技術が開発できるならば,従来の生物機能活用分野のマップは刷新される可能性が高い.

本プロジェクトの根本は,Membranomeという新しい概念に基づく(図2).リポソームは,水環境でリン脂質分子が自己組織的に形成する分子集合体である.さらに,外乱(環境変動:熱変動など,外来分子:ペプチド,金属イオン,リガンドなど)条件下で,その環境と一体となって,リン脂質分子や表層の水分子の構造状態をダイナミックに組み替えて新しいエネルギー状態に移行する(図3).従来の各種の科学技術が,エンタルピーに代表される熱エネルギーによって分子設計・プロセス設計しているとするならば,リポソームは自身の「散逸構造」を利用しつつ,エントロピーを推進力として物質変換・輸送を達成できる分子集合体である.生命-生体系ではこの特徴を活用して,非常に効率よい物質生産系を構築している.即ち,従来のエネルギーを大量消費して物質生産する従来型プロセスと比して,エネルギー付加を最小限の抑制した生命-環境に調和したプロセスが開発できる.上記の目標に向けた新しい現象・原理を解明しようとしている.

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(図2)

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(図3)