【ベシクル】 洗剤分子の潜在機能?

【ベシクル】 基礎物性に関する研究成果が、学術雑誌Colloid Surface B(IF=2.78)に
掲載決定しました!
(生体膜の物理化学的な物性値の解析指針を示したものです)

Keita Hayashi, Toshinori  Shimanouchi, Keiichi Kato, Tatsuhiko Miyazaki, Atsushi Nakamura, Hiroshi Umakoshi, Span80 Vesicles have a More Fluid, Flexible and "Wet" Surface Than Phospholipid Liposomes, Colloid Surface B., 87, 28-35 (2011)

Span80は,ソルビトールという水に溶けやすい頭ひとつに,油に溶けやすい足を1~4本もった分子です.水にも油にも溶ける分子であることから,両親媒性分子と呼ばれ,従来から,洗剤や食品添加物(乳化剤)などとしての利用されてきました.これまでに愛媛大学の加藤敬一研究室では,ETH Zurich Prof. P.Waldeと国際共同研究により,Span80から2段階乳化法という特殊な方法を用いて,ベシクルを調製できる事を明らかにしています.さらには,そのSpan80ベシクルが,ガン細胞に攻撃して,アポトーシス(細胞のプログラム死)を誘導する事を明らかにしてきました.

我々は,Span80ベシクルが,なぜその様な潜在的な特徴を有するか,明らかにするために,ベシクル表面の物理化学的な特性を,様々な手法を解析しました.従来からは,ベシクルやリポソームの特性値は,「流動性」と呼ばれる,膜の動的な特性のみが主体的でした.本研究では,それに加え,蛍光プローブ法(Laurdan分子/ANS分子)や誘電分散解析法を用いて,Span80ベシクルの特性を多角的に調査しました.

その結果,通常のリポソームと比較して,Span80ベシクル表面では,分子が比較的自由な並び方をしており,水を多く取り込んだ形で存在する事が分かってきました.このようなSpan80の特徴が,がん細胞に対する働きを誘導している可能性を示唆しております.


 本研究成果は,加藤研究室出身で,我々の研究グループに博士課程学生として進学した林君(当プロジェクトの研究フェロー; Membranome Fellow)の研究成果です.