【生体膜干渉】 関連の研究成果が、学術雑誌Int'l J. Biol. Sci. (IF=2.86)に
掲載決定しました!(生体膜によるタンパク質生産の制御指針の一つです)
H. Umakoshi, T. Tanabe, K. Suga, H. T. Bui, T. Shimanouchi, R. Kuboi
Oxidative Stress Can Affect the Gene Silencing Effect of DOTAP Liposome in an in Vitro Translation System
Int. J. Biol. Sci., 7, 253-260 (2011)
細胞の内部では,DNAの情報がmRNAに転写され,その情報に基づいてタンパク質が合成される事が知られています.2006年のノーベル賞では,特定の配列のmRNAと相補体を形成して,その配列に相当する遺伝子の機能を探る"RNA干渉"という技術が対象となりました.生体膜は,各種の細胞に普遍的に存在することが知られており,遺伝子の発現(タンパク質の生産)に何らかの役割があるのではないか?とも考えられます.
無細胞タンパク質合成系(細胞からタンパク質合成に必要な要素のみを分離した系)において,緑色蛍光タンパク質(GFP)を生産する事ができます.これまでの研究成果で,モデル生体膜「リポソーム」が共存する時に,GFPの生産がどのように変化するか,検討しております.
今回の論文では,RNA干渉技術やDNA送達技術において活用される事の多い,人工的な正電荷の脂質(DOTAP)からなるリポソームが遺伝子発現に及ぼす効果に着目しています.DOTAPリポソームが,高濃度で存在する場合,GFPの発現量が大幅に抑制される事を明らかにしました(生産Off).しかし,過酸化水素処理により,脂質膜内部を参加する事により,その生産Off効果が,弱くなる事がわかりました.以上の様に,リポソームの表層を適切にデザインする事により,また,環境の条件を適切に制御する事により,対象タンパク質の生産のOn-Offを制御できる可能性を示唆した成果です.